裁判対応の電気機械(火災)事故技術鑑定・PL事故技術鑑定・自動車(火災)事故工学鑑定・火災事故保険裁判技術鑑定・特許同一性裁判及びそれらの複合案件の技術鑑定・工学鑑定を技術鑑定会を中心とする多分野専門家チームで行います。
火災保険の支払い要求に対し、支払い拒否がなされている場合の裁判において、請求者側に立った火災原因鑑定を、専門家チームで行います。初期費用を抑えるため、成功報酬と組合せてお引受けすることもできます。(技術士:大藪勲) |
A.資料科学技術鑑定(結論)資料科学技術鑑定書の作成時点までに,*******組合 理事長 ****氏から提出された各種資料(下記参考公的資料,参考資料)を基に,本件火災の原因考察をする。 通常は火災現場の建物・機器の現物確認及び担当者との面談等を実施して科学技術鑑定書を作成する事が原則であるが,本件においては火災からの経過期間等の関係上,科学技術鑑定として必須な「火災現場の建物・機器の現物確認及び担当者との面談等」は実施困難であった為,提供資料のみに基づいて資料科学技術鑑定を行った。 1.火災原因の推定結 論事故の原因は二つに絞られる。其のいずれが実際に起こったかは断定することは出来ないが,出火場所についてはすべての情報と整合性を得た。
ケース1.塗装室に設置されていた電灯線系統に接続されたエアードライヤー(塗装用スプレーガンに乾燥空気を送り込む為の空気乾燥機)のトラッキングによるコードの火がフロア-に燃え移り,近くに飛び散った塗料の残渣や近くにあった溶剤・塗料などに引火した。
塗装室の動力線系統分電盤での絶縁劣化等による過熱、漏電、発火の可能性も残る。 ケース2.塗装室塗装ブース内に付着蓄積したウレタン塗料による自然発火,ないし着色用ステイン塗料のふき取りウエスの自然発火。
以上の事を、後述する第一報と第二報の事実に基づき確認した。塗装室で電気火災発生(塗装室のコンセントに接続されている電気器具、または塗装室内の電灯線の配電線等において,上記ケースの加熱→発火→漏電→火災が発生した)。そして電灯線系統の配線や接続された各電気器具が焼損し短絡を起こし,過電流ブレーカーがトリップし、電源喪失が生じたこと(第一報)、および、それ以前に、それらの火炎や火災で電灯線、動力線も漏電を起こし漏電電流が流れ検出器の設定時間以上流れたこと(第二報)が確認できた。
********の火災事故について,検証に用いた資料は
本件火災の特徴本件は,発火から本格的火災までの時間がほぼ30分程度と,大変短いことが特徴的である。通常の木造家屋では,1時間程度の立ち上がり時間を必要とする場合が多いのであるが,今回は電気的な報告がなされてから,ごく短い時間で火炎が立ち上がっていることが認められる。
従って考えられる原因の中から,急速に燃え上がる条件を満たす発火メカニズムに絞られうる。条件を満たす発火原因は塗装室内発火がこの条件に該当する。
ケース1の詳細な説明本件においてトラッキングを起こす可能性があった電気機器は,
1.冷蔵庫 2.コピー機 3.換気扇, 4.エアードライヤー, である。 其のうち,コピー機は使用を中止しており,石油ストーブはシーズンオフで,両方ともコンセントは外してあった。換気扇はプラスターボードに取り付けてあり,トラッキングが起こっても発火延焼しにくい。 A 冷蔵庫がトラッキングを起こしたと仮定すると,発生した炎は高いところを目指して階段方向へ渦を巻いて流れ,2階に延焼する。2階が初期段階で激しく燃えたことと整合する。同時に事務所入り口の床が完全に焼失していた事実と整合する。又玄関付近の木製ドアーを通って塗装室入り口の塗料置き場,ポリタンクなどの可燃物により,塗装室に急速に侵入したと考えられる。但し,2階から激しく炎が噴出していたとき,事務所内は白煙が充満し,奥に火が見えた,という事実と整合性がない。
B エアドライヤーがトラッキングの原因であると仮定すると木製の床と,多少は飛散していたであろう塗料などはすぐに引火し,そばにおいてあった塗料・溶剤などに引火したと考えられ,かなり急速に塗装室を焼くので,塗装室のフロアーが全面的に失われているという事実と整合する。 塗装室入り口付近に保管してあった塗料,シンナーに引火すると2階の床を焼くルート,及び階段を通って2階に広がったと考えられる。 塗装室は窓が塗装ブースで遮蔽され,外からは内部の火が発見されにくいような密室状態である。 以上の整合性から,トラッキングを起こした機器は冷蔵庫ではなく,塗装室のエアードライヤーである,と結論することが出来る。 ケース2の詳細な説明本件においては、主たる塗装対象が木工製品であることが特徴的であり,使用されている塗料は主としてウレタン塗料であり,当然ステイン塗料も使われていた。 これらの塗料には,乾燥時間調節のため,乾性油が配合されている。乾性油は,空気中の酸素と結合して酸化硬化し,その時発熱を伴う化学反応が起こる。 これら乾性油を含むステイン塗料,ウレタン塗料をふき取ったウエスを空気中に放置するとかなりの頻度で自然発火することが広く知られている。着色用ステイン塗料は,布にしみこませて木材に塗布する。この布の処理を誤ると発火することがある。 塗装ブースもまた同じ問題を抱えている。本件のブースは,排気を水をくぐらせてクリーニングする方式であり,水が乾いた後にウレタン塗料粉末が残り,これが発火するとダクト内にへばりついた塗料粉末などに引火する。これらの塗料は粉末状になっているので酸化反応が起こりやすい上,初夏の温度上昇時には反応が早くなる為,本件においては自然発火が起こりやすい状態にあったことは容易に推量できる。 一部でも自然発火した布やフィルターは燃えるのに理想的な状態にあるため,かなり急速に燃え広がる。これにより,飛散した塗料,木製の床,ごく近くに保管された塗料やシンナーなどにより発生した大きな炎は2階の床に延焼し,2階の窓から炎を噴出した,と考えられる。 又,床や備品の木製品を燃やした炎は,入り口付近の塗料を爆発させて,階段を上昇し同時に事務所に侵入したと考えられる。 事務所が遅れて延焼したことは,石油ストーブ周りの床以外に床の抜けた様子が,塗装室に比べて軽微なこと,事務所を囲む外壁が比較的多く残っていることから火元でないことと整合する。 参考公的資料
参考資料
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