エ)乙第56号証に添付の絶縁常時監視装置及び警報発生時の応動に関する説明書の第1ページの1.装置の構成に記載されているように,そして特に「当事業場」という図において,検出器のCTが動力線用変圧器と電灯線用変圧器のB種接地線の結合された接地線に挿入されている。
このことは動力線の漏洩電流と電灯線の漏洩電流が足し算されて検出されることを示している。
即ち発信器の第二報で云々されている50mAという電流の値は電力線の漏洩電流と電灯線の漏洩電流が足し算された結果の数値である。
そして,さらにこの電流は工場内全体の電気設備の絶縁状態を監視するために,低周波の監視用信号電圧が接地線を介して注入され,電力線と電灯線の漏洩電流が接地線に還流してくる電流である。
ところで乙第56号証に添付してある「解説」の2ページ[電気火災のメカニズムと危険検知・送電遮断装置の効用]の2.項において
「発信器電源の送電遮断を示す第一報では,30mAを超える漏電が発生してL2配電盤に設置の漏電ブレーカーが働いて電源を遮断したか,過電流,短絡などの原因で規定量以上の電流が流れて同配電盤内の過電流ブレーカーが働いて電源を遮断したかのどちらかである。」
としているが,
もし,漏電ブレーカーが働いて第一報の「電源喪失」の信号を発信したものとすれば,電灯線の漏電電流30mAを生じる漏電箇所が21時12分に除去され,上記に示す絶縁監視装置の検出漏洩電流50mA以上から漏電電流30mA相当分が21時12分に減じられることになり,第二報の21時16分から遡って5分間継続して検出漏洩電流が流れる可能性がないことになる。
従って、漏電ブレーカーが働いた可能性はない。(但し漏電ブレーカーが動作する電流に至らない電流が無いとはいえない。)従って,発信器の電源が接続されている電灯線の過電流ブレーカー動作したものと思われる。それは当該電灯線の配線か接続されている電気器具の絶縁劣化→加熱→過電流→短絡→過電流ブレーカートリップ→電源喪失を生じたことが容易に推察できる。
次に同「解説」の2ページの下から3行目「これは第一報を発信した時間21:11.27.50よりも1分以上も前から動力線系統で50mAを超える漏電が始まっていたと考えられるのは前述の通りである。」としているが,
上記に述べたように,動力線系統のみで50mAを超える漏電と限定出来るものではなく,電灯線の漏電30mA相当を超えない(漏電ブレーカーが動作にいたらない範囲)の漏洩電流と動力線系統の漏洩電流が合算された漏洩電流である。